あなたの好みはどの作品? [恋愛篇]
日本SFの臨界点[恋愛篇]/伴名練 編
先日の怪奇篇に続いて、今回は恋愛篇です。
恋愛篇といっても、そこはSFです。かなり読み応えのある作品がそろっています。
SF作品の中に恋愛要素が含まれている、といった感じでしょうか。
こんなひとにおススメ
- SFも恋愛も好きなひと
- いろいろなタイプのSFを読んでみたいひと
前回もご紹介しましたが、この「日本SFの臨界点」は[恋愛篇]と[怪奇篇]の2冊が刊行されています。
今回読んだのは[恋愛篇」の方で、副題として「死んだ恋人からの手紙」というタイトルがついています。
このタイトルの作品も最初に収められており、遠く離れた宇宙空間を通して恋人から手紙?が届くのですが・・・
といった感じで、比較的オーソドックスな恋愛SFと言えるかもしれません。
その他全部で9つの作品がありますが、 まぁなかなか普通の恋愛話というものはありません。(SF小説なのであたりまえと言えばあたりまえですが。)
最初にも書きましたが、恋愛小説にSFの味付けがされているのではなく、SF小説のなかに恋愛要素が入っている、と言ったほうが近い感じがします。
また恋愛と言っても狭義の男女の恋愛ではなく、もっと広い意味での愛情といった感じでしょうか。
結構難解な作品もいくつか入っていました。
私の想像力が足りないだけかもしれませんけどね。
そんな中、比較的読みやすかったのは、「生まれくる者、死にゆく者」や「アトラクタの奏でる音楽」や「人生、信号待ち」などでしょうか。
「生まれくる者、死にゆく者」は、老人が徐々に死んでいき、赤ちゃんが徐々に生まれてくるという世界の話。
「徐々に」というところが面白い設定ですね。最初は見えなかった赤ちゃんが、たまに見えるようになり、見えたり見えなかったりしながらだんだん見える割合が増えていくようになります。
老人の場合はその逆です。存在確率が徐々に減っていくおじいちゃんと、逆に存在確率が徐々に増えていく孫。
同時に存在しないと会うことができないのですが、果たして・・・という、なんとも不思議な話でした。
「人生、信号待ち」も不思議な話です。大きな道路と信号に挟まれた、高速道路下の空間に閉じ込められてしまった男女。
そこから非現実的な話へと展開していきますが、なんとなく読後に暖かい気持ちになれるお話です。
他にもちょっと難しめだけれど、SF好きにはぴったりといった話もあります。
読みやすい話から難解な話まで、ぎっしりつまった9作品です。
普通の恋愛小説では物足りない方、たまには不思議な恋愛小説もどうでしょうか?
こちらは怪奇篇。怖い話では無いですよ。
SF&ミステリの傑作といえば、これですね。