時代を超えて読み継がれる! 日本のタイムトラベル小説の最高傑作!!
マイナス・ゼロ/広瀬 正
今回は今までおすすめしてきた小説と比べると、ちょっとマイナーな作品かもしれません。
しかし! タイムトラベル小説が好きなひとたちの間では、有名な作品だと思います。
タイトルも、あるキャッチコピーから一部お借りしましたが、決して大げさではないと思います。
最高傑作!!とまで言い切って良いかどうかは分かりませんが(他にも良い作品があるので・・・)、間違いなく上位に入る面白さですよ。
こんなひとにおススメ
- タイムトラベルものが好きなひと
- 昭和初期の文化に興味があるひと
この作品、私が最初に読んだのは高校生の頃だったと思います。なんとなく「マイナス・ゼロ」というタイトルに惹かれたことを覚えています。ゼロなのにマイナス?みたいな。
そしてこの作品を読んだことがきっかけで、タイムトラベル小説の面白さに目覚めてしまったわけですね。
で、今回久々に本を取り出してみて驚いたのですが、この作品、かなり昔に書かれたものだったんですね。作者のあとがきが、昭和45年となっていました。びっくり。
そして巻末の星新一さんの解説にも、昭和52年との記述があります。改めて考えると、もう半世紀も前の作品ということになります。
でも今もこうして販売されているということは、時代を超えて読み継がれる、それだけ面白い作品であるということの証明でもありますね。
では、ここで簡単に内容をご紹介。
1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械―――それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった・・・
まずこの作品が古さを感じさせない理由のひとつとして、時代設定が昭和初期の頃だということがあります。
SFで現代や近未来の設定のものは、時間が経つとどうしても一部の内容が古くなってしまうことがあります。
でもこの「マイナス・ゼロ」は、私が高校生の時に読んでも、今読んでも、同じ昭和初期という昔の話であるため、違和感がないんですよね。
で当時の東京の街並みや文化などが非常に細かく描かれているので、そういったものに興味のある方は、より一層作品を楽しめるのではないかと思います。
しかし! 本筋はそこではありません。やはり何と言ってもタイムトラベルです。
SFだからこそ描ける、タイムトラベルです。過去へ行ったり、未来へ行ったり、時間を飛び越えることによって発生する様々な状況、そこがタイムトラベルの面白さです。
真っ先に思いつくのが、「親殺しのパラドックス」ですかね~。過去へ行って自分の親や祖父母を殺してしまったらどうなるのか?というものです。
これについては多くの作家がいろいろな解答を出しているわけですが、これを語りだすと話がどんどん違う方向へ進んでしまいますので今回は割愛。
ただ本作は、主人公がタイムマシンで過去や未来に自由に飛び回るわけではありません。ちょっとした事故により過去に取り残されて、そのままそこで暮らすことになる、というのが大まかな流れです。
う~ん、もう少し具体的に書きたいところですが、ネタバレになっちゃいますかね~。なかなか面白さを伝えるのが難しいところです。
そんなこんなでいろいろあるわけですが、物語の終盤にあっと驚く展開が待っています。そして前半で登場していた伏線の回収。今までバラバラだった線が一本に繋がる感じ、大好きです。これこそタイムトラベル小説の醍醐味ですね。
タイムトラベル小説好きで、まだ読んでいないという方、ラッキーです。こんなに面白い本を見逃していたなんて!
ちなみに内容は500ページほどありますので、じっくりと腰を落ち着けて読むことをおすすめします。